限りなくグレーに近いブラック企業と限りなくブラックに違いグレー企業とはどっちが良いのか

プレーリードッグプレーリードッグである。

この一文はまさに、プレーリードッグプレーリードッグである、ということを示している。一分の疑問や疑念すら滑りこむ余地がなく紛れもなく、プレーリードッグプレーリードッグである。そう言いきれる。しかし名前にドッグが付くほどドッグドッグしてはいない。対してシェットランド・シープドッグはドッグドッグしている。その名前同様にその見た目もドッグドッグしており、これはもう正真正銘のドッグと言える。両者を見比べてみて、やはりプレーリードッグは言うほどドッグドッグしていないな、という印象が強まる。プレーリードッグプレーリードッグであるが、果たしてドッグなのかと問われたとして、さてどうだろう、ドッグであると断言出来る自信は、今のところあまりない。ひょっとすると、ドッグではないのかも知れない。そんな予感がひらりと脳裏をよぎる。そしてこの予感はとても重要なことのように思える。

結論から言って、プレーリードッグはネズミである。名前にドッグとあるのにドッグではないらしい。『紛らわしい』と『間際らしい』くらいの間柄で紛らわしい。この喩えは適切ではないのかも知れない、と言ったそばからそう思う。プレーリードッグの名前に『ドッグ』と付け加えてみた人物の気持ちにそれとなく近づいた気がする。

プレーリードッグの鳴き声はイヌのそれに近いのだという。つまり外見ではなく鳴き声がドッグドッグしているということらしい。外見は内面を映す鏡だと言うが、なるほど、その裏側は鏡には映らなくて、と言うか映せない。プレーリードッグの外見は、その名前と関係がなかった。つまりだ。犯罪者の部屋からバイオハザードが見つかったとしても、事件とはなんら関係ない。あるいはそう言えなくはないか。鳴き声が先にあって、たまたま名前がくっつく。そういう人間性が先にあって、たまたまバイオハザードがくっつく。名前が鳴き声を作らないのと同様に、バイオハザードは歪んだ人格の形成に寄与しない。そもそも人はネズミにドッグを感じるような、ある種の歪みを持った人種なのだ。自分が歪んでなんていないなんて、どうして言える?もう恋なんてしないなんて言わないのならば、それに関して言えないのと同様に歪んでなんていないなんて言えないよぜったい、と続けることが90年代からの習わしであり掟であり日本人としての美徳であるはずだ。プレーリードッグはキスしたりハグしたりしてスキンシップを図るが、その一部はリスを殺す。食べるためだけではなく、ただ殺すために殺す。文字通り、殺害する。自分たちの餌を確保するために。草食性の動物が温厚だなんて、どうして言える?いいや言えない、と反語を駆使して変則的に攻めてみる。マッキーの言い回しは紛らわしいので。少なくとも次からはプレーリードッグを『さん付け』で呼んだ方が良い、とそれだけは確かに言える。

『プレーリー』とは『草原の』という意味であり、主に北米の草原地帯のことを指す。しかし北米の草原地帯を私は知らない。まず前提として、見たことがない。テレビの画面越しには観たことがあるかも知れない。プレーリードッグをテレビの画面越しで観たことがあるので、きっと北米の草原地帯も観たことはあるのだろう。でも実際には見たことがない。同様にプレーリードッグも観たことはあっても見たことはない。違いとしては『観た』と『見た』。この両者の間には仮想と現実の違いが歴然と横たわる。パワプロでホームランを打つのは簡単だが、バッティングセンターでホームランを打つのは難しい。バントでホームランを狙えたファミコンの時代はとうに過ぎている。

すっくと、おもむろに立ち上がるプレーリードッグ。クリクリとした黒目がちな両の眼を遠くに据えて、前脚は行儀良さそうに胸の前。黒ずんだ鼻がヒクヒクしていればなお良い。可愛い。しかし殺し屋なので油断は出来ない。クリクリとした黒目がちな両の眼はそのつぶらさに反し、虎視眈々と我々の命を奪う契機を見定めているのかも知れず、胸の前で行儀良く揃っている前脚に関しては言わずもがな凶刃である。黒ずんだ鼻は死の匂いを敏感に嗅ぎとる。ヒクヒクと。小悪魔と言うか小死神。合コンの席で、上記の要素を備えた女子と遭遇してしまった場合は、実のところ気の毒としか言いようがなく、我々に出来ることと言えば生きて帰ることをひたすら祈り続けるだけだったりする。小死神女子の前で、男という生き物はリスに等しく、つまるところ無力だ。

小死神女子は小死神女子である。
この一文はまさに、小死神女子は小死神女子である、ということを示している。一分の疑問や疑念すら滑りこむ余地がなく紛れもなく、小死神女子は小死神女子である。そう言いきれる。一部の専門家からプレーリードッグとの類似性が指摘されてはいるが、しかし小死神女子はあくまでも小死神女子であって、決してプレーリードッグではない。小死神女子から獣臭がしないことからも、やはりそうだと言える。往々にしてシャンプーの匂いをすれ違いざまに放つことが多い。プレーリードッグはリスを殺し、小死神女子は男をコロす。リスと男の類似性が指摘されて久しい昨今、やはりプレーリードッグと小死神女子はイコールで結べる関係性である可能性が高いのではないのかとの意見が後を絶たないが、しかしプレーリードッグは自撮りをしないという事実から見て、やはり異なる種であるとの結論に至る。プレーリードッグは決して『いいね』を要求せず、小死神女子は自虐的かまってちゃん要素を自撮り画像の全面に押し出してくる。小死神女子について最新の研究内容によれば、ハエトリグサとの類似性も指摘され始めているとのことだが、その真偽は未だ定かではなく、目下審議中である。

小死神女子はとても女子女子してはいるものの、しかし女子と言うには年齢を重ねすぎている場合が多々見られ……